学習障害(LD)は、読書や文字を書くこと、聞いたり話したり、いくつかの選択肢の中から根拠をもって導き出す(推論)ことが難しい発達障害です。
この障害は特定の分野において学習の遅れが見られ、主に書字障害(ディスグラフィア)、読字障害(ディスレクシア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つに分類されます。
学習障害は早く気づくことが難しく、小学校に入学するまで症状が現れないこともあります。そのため、周囲が早めに気付くことで子どもの自信の低下を防ぐことが大事になってきます。
療育方法
学習障害の療育方法は、個々のニーズに基づいて設計される必要があります。学習障害に対する効果的な療育方法をご紹介いたします。
個別指導と特別支援教育
学習障害のある子どもには個別の指導が必要です。教育者や専門家による特別な支援教育が効果的であり、子どもの成長段階や個別の特性に合わせたアプローチが求められます。
アセスメント
障害の程度や特性を正確に把握するために、継続的なアセスメントが不可欠です。これによって適切な支援策やプログラムを設計することができます。
コミュニケーションと協力
学校、家庭、医療機関など、様々な環境でのコミュニケーションと協力が重要です。情報共有や連携により、子どもが持つ特性に応じたトータルなサポートが実現しやすくなります。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、人との関わりやコミュニケーションの向上に役立ちます。
学習障害のある子どもが積極的で効果的に社交的な場面で適切な行動ができるようになるために導入されます。
環境作り
学習環境を整え、子どもが安心して学べる空間を提供することが重要です。視覚的な刺激や音響面での工夫、快適な学習環境の整備が役立ちます。
学習障害とは
学習障害は、知的障害や視聴覚に問題がないにもかかわらず、特定の学習領域での遅れがみられる状態です。
小学校入学前にはあまり気づかれないことが多く、特に小学生になると国語や算数の学習が始まることで発症が見られてきます。
有病率
学習障害の有病率は、学齢期の子どもにおいて約5〜15%とされ、成人においては約4%とされています。
クラス内に2〜3人程度は何らかの学習障害を抱えていると考えられます。
他の発達障害との併存
学習障害を持つ子どもは、ADHD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム症、アスペルガー症候群)などの発達障害、不安障害や抑うつ障害などと併存することがあります。
これらの病気が学習を困難にしている場合、学習障害の診断が難しくなることもあります。
学習障害のタイプと特徴
学習障害には主に3つのタイプがあります。
読字障害(ディスレクシア)
読字障害は、文字を正確に読むことが難しく、読解力が著しく低い状態です。耳から聞くことで理解できることがあるため、失読症とも呼ばれます。
書字障害(ディスグラフィア)
書字障害は、文字を正確に書くことが難しく、文字の大きさや形状を揃えることが難しい状態です。失書症とも呼ばれます。
算数障害(ディスカリキュリア)
算数障害は、数字の感覚や計算、推論が極端に苦手な状態です。失算症とも呼ばれます。
これらの障害は単独で発症することもありますが、同時に複数の障害が併存することもあります。
年齢別の症状
学習障害は学習を始めてから症状が現れるため、年齢ごとに異なる症状が見られます。
幼児(1~5歳)
幼児期には学習障害の症状はほとんど見られませんが、次のような特徴が見られる場合があります。
・お絵かきや積み木が苦手
小学生(6~12歳)
小学生になると学習が本格化し、学習障害の特徴が現れることがあります。
書字障害: 作文が書けない、文字が鏡文字になる
算数障害: 数字を覚えられない、計算が苦手
中学生・高校生(13~18歳)
中学生・高校生になると学習障害が顕著になり、他の生徒との差が広がることがあります。
書字障害: 作文や小論文が書けない、文字を書くことを嫌がる
算数障害: 文章題に苦手意識があり、式を立てることが難しい
成人・社会人(18歳~)
大人になると学習障害が顕著になることがあり、仕事や社会生活において影響が出ることがあります。
書字障害: ひらがなやカタカナが書けない、メモを取ることが難しい
算数障害: 時計の読み方が難しい、自分で式を立てられない

学習障害のある子どもとの接し方
学習障害のある子どもとの接し方は理解とサポートが欠かせません。注意するポイントをご紹介します。
頑張ってもできないことを理解する
学習障害は努力だけでは克服できないものです。できないことをからかったり、叱ったりせず、理解と共感を示しましょう。
工夫してサポートする
子どもの特性やニーズに合わせて工夫し、適切なサポートを提供しましょう。異なる方法で学ぶことができるような環境を整えます。
自己肯定感を促進する
学習障害があっても、他の得意な分野や特性があるかもしれません。子どもの自己肯定感を高め、ポジティブな側面に焦点を当てましょう。
コミュニケーションを大切にする
学校や家庭、医療機関など、様々な環境でのコミュニケーションと協力が必要です。情報共有や連携により、子どもにとって最適なサポートを構築します。
最後に
学習障害は個々の特性により異なるため、柔軟かつ個別化されたアプローチが求められます。
家族や周囲の人々が理解し適切なサポートを提供することで、学習障害のある子どもたちが自分自身を受け入れ克服する力を育むことができます。